昭和・戦争・失敗の本質

昭和・戦争・失敗の本質

2025年1月1日

1 半藤一利 新講社

「靖国神社の緑の隊長」の半藤一利である。彼はジャーナリストであり、昭和史、戦争史の研究家であり、作家である。ちなみに妻は夏目漱石の孫、新宿区立漱石山房記念館名誉館長の半藤末利子である。

この本は、亡き父の書棚を整理して見つけた。本を買うのは好きなのに読了しないことの多かった父である。が、彼自身の字で最終ページに「’10.2.11読了」とあった。つまり、最後まで興味深く読んだのだろう。

父は戦時中、予科練少年飛行兵であった。あの戦争が何であったのか、なぜあのような終末を迎えたのかについて、いつも気にかけていた。この本もそういう観点で読まれたのだろう。父自身の人生に大きく関わるような内容であったのかもしれない。

この本は、戦争史やそのこぼれ話など、他の著作本に所収されなかった短文類がまとめられている。大日本帝国の戦争目的、失われた大艦巨砲や、「最後の聖断にまつわるエピソード、昭和史における「もしも」の話などである。いずれも、先の大戦が始まるまでの日本における様々な失敗や問題点、陸海軍の愚策、各政治家の傲慢や思い込み、そして国際法音痴であった日本の悲劇などが描かれている。

歴史なんて後から振り返るからわかることばかりなのかもしれない。それにしても、日本は、そして軍部や政治家は、それぞれが勝手な思い込みやメンツなどにとらわれて、ずるずると深みにはまり込み、そこから脱する賢さも勇気も持てなかった。あの終戦は、むしろ奇跡ですらあった。まかり間違えば、本土決戦によってこの国自体が滅亡する危険性すらあったとわかる。

それにしても、なぜ政治家は、国民は、過去に学ばないのだろう。どうして今、同じような道を進もうとしているのだろう。過去を学び、しっかり反省するところからしか、新しい道は開けないというのに。