晴れたら空に骨まいて

晴れたら空に骨まいて

104 川内有緒 ポプラ社

「空をゆく巨人」の川内有緒。この人のノンフィクションはいいなあ。何かまっすぐな、素直な感じがある。

この本は、大事な人を失い、見送った家族や仲間の話である。彼らはその大事な人の骨を世界のどこかに散骨したり、これから散骨しようとしている。そうすることによって区切りをつけ、あるいは気持ちを整理する。そして前を向いて生きる力とする。そんな物語である。

登場するのは自由に生きた人たちだ。自由に生きた人は、亡くなった後も自由でいてほしいと周囲も願う。本人が希望したり、周囲がそれを願ったり。散骨は違法だと考える人もいるようだが、自然葬への関心が高まるにつれ、法務省からも「節度をもって行われる限り、罪にはあたらない」との見解が出されるに至っている。お墓を建てるという習慣はここ百年くらいのもので、江戸時代の庶民は個人を海や山に埋葬していたという。

この本を勧めてくれたのは夫だ。まじめに仕事を勤め上げた人ではあるが、今や自由人である。世界中をふらふら一緒に旅する私も、どうやら自由人の仲間入りをしているらしい。確かに、一つ所に押し込められるのは苦手である。死んでしまったら苦手も何もないのかもしれないが。

我々の骨は、墓はどうしようかね、という話をした。まだ現実的、具体的な話ではないが、そう遠くない将来の話ではあると思っている。一人ぼっちが苦手な私としては、先に死んだ場合は骨壺を夫のパソコンの隣にでも置いてほしい。その後は、墓に入れるなら夫と一緒がいいし、散骨するなら一緒に撒いてほしい。撒くならどこかな。二人で旅したノルウェーはベルゲンの「Fish Me」というレストラン前の海がいいかな。台南の、どこへいくともわからずに乗った船の上からでもいいな。骨になって、世界中をたゆたうのっていいかも。

死を考えることは、今を生きることでもある。怖がらずに、これから必ず起こるであろうこととも向き合わねばならないのだな。悲しくはない、むしろ明るく読み終えられる本であった。