99 杉江由次 大森皓太 本の雑誌社
本の雑誌社の営業、編集の杉江由次と三鷹UNITÉ・京都鴨葱書店の店主大森皓太が交わした12の往復書簡。本を作り、売ること、読むことについて真摯に語り合った記録。
杉江さんは本当にいい人だ。この本の中で太陽を背負ったような人だと言われていたけれど、本当にそう。この人なら信用できる、この人の作る雑誌や本なら買っても大丈夫だと私は思っている。大森さんは知らなかったけど、とても真摯で誠実な人だとわかる。何より、本を売ることに真正面からまじめに取り組んでいて、こういう人がいるから本屋に未来がある、と思える。
本は売れなくなっている。でも、荻窪の「Title」の辻山さんは「切実な本は売れてます」と言ったという。少し前までTitleのそばに住んでいた私は、確かにそうだ、あの店で切実な本を何冊も買っていた。
コロコロコミックがあり、たくさんの雑誌が並んでいるような街の本屋さんはどんどん廃れていくけれど、独立系の、その本屋にしかないような本が並んでいる店は新たにできていたり、意外に人が出入りしていたりする。目的もなく時間つぶしにふらっと立ち寄って、たまに買うこともあるという本屋が減って、「本をを買おう」と思ってめがけていく店ばかりになったのか。普通の町の本屋さんに育てられた私は、それが少し寂しい。
本を読まない人が増えた。本に助けられて生きてきた私には、本を読まない人生が想像できないけれど、たぶん、スマホやTikTokやYoutubeなしでは生きられない人もいて、そういう人から見たら私は未知の生物みたいなものなんだろう。人を支えるものにもいろいろあって、それもまた多様性の時代だ。
本屋をやってみたい、と子どものころから思っていた。今は貸棚本屋さんをひと棚借りて本屋のまねごとをしているけれど、そこで思ったように売ることすら結構難しい。人に本を届けるって本当に難しい。はっとするような、知らなかった場所を見せてもらったような本に出合うたび、これをだれかに読んでほしい、一緒に本の話がしたいと思ってブログを書いたり、Xで発信したりもするけれど、読んでもらえることも、語り合えることもめったにない。たまにあるとものすごくうれしい。
本がいつまでもあり続けますように。良い本が作られますように。本が売られる場所があり続け、そしてそこがうれしく楽しく希望の場所でありますように。祈るような思いで、読み終えた本であった。
