死んだ山田と教室

死んだ山田と教室

66 金子玲介 講談社

ずいぶん前に図書館に予約を入れて、ようやく回ってきた。本の雑誌が選ぶ2024年度上半期ベスト10第1位、本屋大賞2025ノミネート、第65回メフィスト賞…どうやら大人気だったらしい。

何しろ「夫よ、死んでくれないか」の直後に読んでしまったものだから、そのコントラストがすごすぎてくらくらしてしまった。片や、頑張っても頑張ってもうまくいかない女性たちの恨み節、片や、エリート男子高校生の輝ける青春。まあ、死んでしまっては輝いてはいないのかもしれないけどさ。

夏休みの終わりに交通事故死したらしい山田。山田は成績が良くて誰にでも優しくて人気者だった。意気消沈したクラスだったが、スピーカーから突然、山田が語りだす。死んだはずの山田が。

ありえない設定、くだらない展開、だけど輝ける青春。という物語だな。真っ暗で全然楽しくない高校時代を送った私としては隔絶感が半端ない。エリート大学の付属校の澄み渡る青春ってこんなだったのか。悩んでも苦しんでも明るいじゃないか、恵まれてるじゃないか、なんて能天気なんだ。

みんな山田が好きだった。でも、いつか忘れていく。忘れない奴もいる。そういうことだ。それにしても明るい。こんな青春、私は知らない。「夫よ、死んでくれないか」の女たちの抱える苦悩なんてこいつらには無縁だろうなあと思ったりする。読む順番が悪かったのかなあ。

これを読んで懐かしく思い出すような高校時代を私は持っていない。クラス全員をよく知っていて、最強の席順を決められるような人は、どこにもいなかったな。