100 凪良ゆう 講談社
「流浪の月」以来の凪良ゆう。「流浪の月」で本屋大賞を受賞したと思ったけど、本作も本屋大賞受賞…ということは、二回とったのか。なんかすごい。
「流浪の月」とテイストは同じかも。男女関係、親子関係、隣人関係、などなどあらゆる人間関係が錯綜する中、人が出会うであろう様々な問題…仕事や男女差別やアルコールやヤングケアラー、虐待などなどが描かれる。その中で一生懸命生きている人間を描こうとしているのがわかる。
この物語を、いったいみんなどう受け止めるのかを知りたくなる。社会に出て出会う理不尽な女性差別や、恋人同士にいつの間にか芽生えてしまう依存、支配関係、親が子供におぶさってはばからない状況、教え子に避妊具を黙って渡す教師。それをリアルだと感じるのか、そんなことをわざわざ書くのかと鼻白むのか、こういうテーマが最近は受けるんだよね、と考えるのか・・・。
私のような年代の女性にとっても、これらは結構リアルな問題ではあったし、でも、なかなか口に出せないことでもあった。そういうことを物語にがっつり書き込める時代になったのだなあという感慨がある。だが、それと同時に、しんどいよなあ、とも思う。そう思うのは、私がもう男女の恋愛などというものから現役を退いているからなのだろうか・・などとふと立ち止まってしまう。もうね、好きな人とすれ違ったり、言いたいことが言えなかったり、遠く離れたり、別の人と関わったり、そういうめんどくさい話は疲れるよなー、とどこかで思ってる自分に気づく。もっと幸せな物語が読みたい、と思うのは、私の個人的な感想。でも、この物語が本屋大賞を取るということは、みんな、こういう問題に真正面からまじめに向き合うパワーがあるんだなあ、それはすごいことだなあ、と思う。
LGBTの問題も、同性婚の話も、夫婦別姓制度も、私が若い頃には、冗談になるような夢の話だったのに、今はまじめに論議されている。まだ実現はしてないけどさ。そして実現してほしいと心から思うけどさ。でも、そういう問題にみんなが向き合うようになっただけでも、世の中は変わってきてるよなあ、と改めて思う。そういうことに対する世間の姿勢は変わってきたけれど、それでも、いつの時代も、人はすれ違うし、誤解しあうし、好きなのに傷つけあったりもする。親と子は苦しめ合ったりもする。それは永遠に変わらないことなのかな。
だとしても。みんな幸せになりたいよね、なってほしいよね。なんて思わずにはいられなかった。読み終えて、なんかしんみりしてしまった本だった。