96 松本健一 ミシマ社
鞆の浦に旅行したブログ記事へのミカンさんのコメントで知った本。ミカンさん、ありがとうございました。
かつて交通や物流は海や川が主流だった。ということを、私たちは忘れがちである。子どものころ、海も川も、それが存在することは知っていたし、海水浴も多少は行った。だが、それらが生活を支える重要な基盤であるという認識が私には全くなかった。水があるところ。としか思っていなかった。車も鉄道もない時代、船だけが多くの人と荷物を運ぶ手段であった、ということを私は忘れていた。
海岸線は日本のアイデンティティであり、心のふるさとである。とこの本は言っている。日本の海岸線はアメリカの1.5倍、中国の2倍以上。その海岸線が、近年、すさまじい速さで変貌を遂げている。だからこそ、その歴史をたどってみたい。というのが作品の趣旨である。
津、浦、湊、灘、汀‥‥。水際にかかわる表現、漢字それぞれの意味すら、私はよく知らなかった。いわゆる和船は水深の浅い港が必要で、一方黒船のような洋船は喫水が深く、深い港が必要だということも、言われて初めて気がついた。平戸より長崎が栄えた理由、下田より横浜が貿易港となった理由。それは港の水深や海中の地形に由来していた。
鎖国があまりに長く続いたため、ここから先は入国不可、と地図上に線を引けば、もうそこから先には異国の船は入ってこない、と多くの人が信じ切ってしまっていた。その先入観にも驚いたが、そういうことってある、と改めて気がついた。海は、外界と隔てる仕切りであると同時に、外界とストレートにつながる導線でもある。
と、脈絡もなく書き連ねたが、実際、この本は、様々なことを次々に表しており、私の理解力では知識があちこちに取っ散らかってしまって上手にまとめることができない。全体としては、海と川に親しみを感じ、見直してみたい、と思える本、という感想になってしまって、すまぬ。だが、面白かった。
