156 キース・トムスン 杉田七重 東京創元社
副題は「日誌から見る海賊たちのリアルな生活、航海、そして戦闘」。
17世紀後半、カリブ海でスペインの植民地や商船を襲撃する、バッカニアと呼ばれる海賊たちがいた。イングランドやフランス、オランダの海賊だ。彼らの中には航海日誌をまめにつけている者がいた。それらの日誌をもとに、海賊たちのリアルな冒険の様子を描いたのが本書である。
南米コロンビアと中南米パナマの間のジャングル、ダリエン地峡から始まる冒険。先住民族クナ族の王からスペイン人にさらわれた美しい孫娘を救い出してほしいと依頼を受ける。苦労の果てに娘を助け出しても、彼女は浮かない顔、そして妊娠している。実はスペイン人と相思相愛で、駆け落ちしたらしい。というあたりから始まって、あとはもう、とにかく略奪、略奪である。深刻な水不足や食糧不足もあれば、船内の反乱もある。海賊団は意外に民主的で、船長は選挙でえらばれるのだが、それもみんなの気分次第で結果は流動的に動くし、うっかりすると反乱によって命を脅かされる。船内での博打で大儲けしたものは本国に帰りたがるし、大損したものは略奪を続けたい、なんなら勝った奴から取り戻したい。もう無茶苦茶である。
本来、医師として、あるいは数学者、植物学者として優秀なものも一味にいる。陸地での平穏な生活に飽き足りないものもいれば、本国では十分な報酬を得られないものもいる。一度故郷に帰ったとしても、また、船に乗りたくなってしまう。スペインと和平を結んだイングランドで捕まり、裁判にかけられもするが、意外な展開で無罪になったりもする。波乱万丈である。
スチーブンソンの「宝島」やアーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」なども確実に彼らの日誌に影響を受けている。ダリエン地峡って、ランサムに出てくるものね。最近じゃ「海賊王におれはなる!」もそうか。(私はマンガもアニメも全く見てないんだが、なぜか歌舞伎版だけ見てるのよねー。)
次々に信じられない展開があって、まあ、本当に向こう見ずな人たちの集まりだなーと思う。が翻訳が固いのかな。読むのには結構苦労した。地図を何度も眺めながら、おお、今はここか…と楽しめはしたけれど。時間があって、冒険ものが好きな人にはお勧め。