62 佐藤正午 角川書店
2026本屋大賞二位。すごい本であった。
妊娠中の若い女性が、ほんのちょっとの不注意から事故を起こしてしまう。そこから始まる転落の日々。つらかった。あんまりつらくて、もうこういう悲しい本は読まずに、能天気に明るく笑える本だけ読みたい、とすら思った。だけど、本は、最後まで読むもんだ。読み通して、心が震えた。
私は自動車免許を持っていない。何度か取ろうと思ったのだが、家族に大反対された。子どもが「お母さんが運転しても、私は乗らない」と宣言したのであきらめた。あきらめて良かったと今では思っている。不注意極まりない私が運転をしたら、きっといずれこの主人公と同じようなことをしでかしたのだと思う。その時、私はどうしただろう。そんなことを考えた。それから、この主人公のように「前科者」になってしまった人に、私はどれだけ公平に、対等に、思いやり深くふるまえるだろう、とも考えた。「見過ごせないから」と彼女に当たり前のように寄り添った一人の女性のように行動できるだろうか。
いろいろな人が登場した。身勝手で自分の都合だけでかかわってくる女友達。お金にだらしない同僚。噂話で人を貶める人間。どれもリアルで、ああ、こんな人知ってる、と思った。私の中にもこんな人がいるのかも、と思う部分もあった。
物語は、人間を描く。当たり前だけど、そう思った。一人一人にいろいろな人生がある。それを改めて思い出させてくれる小説であった。
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