15 井上荒野 春陽堂書店
別荘地に熊が出て、二人の男女が襲われ、死亡した。彼らは不倫中であった。そこから始まる閑静な別荘地の人間模様。不倫に敗れて管理人になった男、そこへ助手として入る、同じような境遇の女。別荘地に住む一見円満そうな夫婦に潜むざらついた関係性や互いにすれ違う老夫婦、妊娠が判明した若夫婦の裏腹な心理・・・。怖い怖い、人間のほうがよっぽど猛獣だ。
井上荒野は怖い。誰もが目をそらそうとしている夫婦や家族の闇をぐいぐいと暴き出してしまう。でも、誰もがあんまり憎めない。どこかで共感してしまったり、わかるよ、と言ってあげたくなる。
作者自身も別荘地に夫婦で住んでいるのだけれど、これ読んだ作者の夫は怖いと思わないのかなあ。そんなこと、とっくのとおに織り込み済みで夫婦になったのかなあ。ぞくぞくしながら一気に読んでしまった。
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