生命活動として極めて正常

生命活動として極めて正常

125 八潮久道 角川書店

第一回北上次郎「面白小説」大賞受賞作。この賞の目的が「新しい作家を発掘したい、売り出す機会を作りたい!」なのだから、確かにそうなんだろうとは思うんだけど。

短編集。面白いのもあったが、読みにくいのもあった、というのが正直な感想。なんでこんなに読みにくいんだろう…と考えていて思いついたのは、もしかして読者をあんまり想定してないんじゃないか、ということ。書き手が自分で楽しんで自分のために書いているので、読み手の受け取り方をそんなに想像していないからわかりにくいというか読み取りにくいんじゃないか。アイディアは面白いんだけどなあ。

とはいえ、一番よかったのは「命はダイヤより重い」。ここに出てくるギャル短歌が面白くて、もっとギャル短歌読みたい、と思った。たとえばこんなの。

あたしだけブラックホールにのまれてもあたしはマジですべてに感謝 沙織
魚とかマグロしかあたしわかんない。だってあいつら人間じゃねえし 沙織

第一篇の「バズーカ・セルミラ・ジャクショ」は、実は私が日頃からうっすらとこの社会…なんでもWEB化し、ネットに乗せてしまう昨今の状況に対するアナログ人間としての恐れのようなものが描かれていて、本来ならもっと共感するんだろうに、読みにくくて参ってしまった。まあ、私の読解力に問題があるのかもしれんが。

それと、やっぱり私は人が死ぬ話が苦手なのに、この小説集はわりにあっさりと人が死んでしまう。それも合わない原因であったかもしれない。

北上次郎さんこと目黒考二さんの書評にはずいぶんお世話になったけれど、めんどくさがり屋で新しいものが苦手な私とは趣味の違う部分もあったので、これを北上次郎さんが選ぶ、というのは逆にわかるような気もする。確かにこの人の発想力は素晴らしいものがあるので、今後、もっと読者を意識して読みやすいものを書いてくれたらいいなあ。などと偉そうに思う私であった。