生命海流 GALAPAGOS

生命海流 GALAPAGOS

2021年10月16日

83 福岡伸一 朝日出版社

動的平衡の福岡伸一博士である。彼は、子供時代にドリトル先生を読んで科学者になることを決めたという。実際にドリトル先生の新訳を出しているし、今現在、新聞で「新・ドリトル先生物語」を連載中である。児童文学にどっぷり浸かった子供時代を過ごした彼は、理系にしては非常にわかりやすく美しい日本語を使う。彼の文章は、とても素晴らしい。

さて、この本は、日本でコロナが話題に登り始めた頃に、彼が出版社の応援を得て船を仕立て、かつてダーウインの辿った航路をなぞってガラパゴスを旅した記録である。なぜ旅に出るに至ったか、から物語は始まり、そして現実の冒険が始まる。船旅の困難さと、出会う動物たちへの驚き、発見、そして旅の仲間、食べた料理、考えたこと、わかったこと。私もゾウガメに、リクガメに、ウミイグアナに、リクイグアナに、グンカンドリに会いたい、と心から思ってしまった。

ガラパゴスの動物たちは、人間を恐れない。他の土後の動物たちも、人間の凶悪さを本能的に知っていて、すぐに恐れ、逃げるのに、ガラパゴスでは、むしろ近づいてくる、興味を持って。そのことへの考察がまた、非常に胸深い。

この世界は、本当に長い時間をかけて現在の姿になった。生物たちも、地勢も、気が遠くなるほどの進化を遂げ、今も変化し続けている。わたしたちは、その中のほんの一瞬、この場に表れては消える泡ぶくのようなものでもあるのだ。ということを、つくづくと思い知る本でもあった。

ああ、ガラパゴスに行きたい。私が中学生か高校生なら、この本の感想文を夏休みに提出するのになあ。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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