生存する意識 植物状態の患者と対話する

生存する意識 植物状態の患者と対話する

2021年7月24日

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「生存する意識 植物状態の患者と対話する」

エイドリアン・オーウェン  みすず書房

事故や病気で、体が動かせず、瞬き一つできず、声をかけても体を揺すっても全く応答しない植物状態になった人間がいる。だが、その人には、もしかしたら意識があり、周りで起こっていることすべてが分かっているのかもしれない。ただ、それを表現することができないだけで。だとしたら、それをどうやって確かめることができるのか。

その難問に挑み続けているのが、この本の作者である。そして、驚くべきことに、物事を認識する能力が皆無だと思われている植物状態の人間の15~20%は、どんな形の外部刺激にも全く応答しないにもかかわらず、完全に意識があることを彼らは発見したのだ。しかもその中には、再び話せるようになったり、歩けるようになったり、なんと大学に復帰した人までいる。もしかしたら、彼らは回復の見込みなしとされ、人格を否定され、悪くすれば生命維持装置を外されることすらあったかもしれないのだ。

どのようにして、彼らの意識を確かめるのか。様々な装置、機器が用いられるのと同時に、どの様に、それらを有効に使うか、が問題となる。たとえば、「テニスをしているところを思い浮かべる」のと「自宅を歩き回る様子を思い浮かべる」のとでは脳の活性パターンが違うことに着目して、脳をスキャンしながら、イエスならテニスを思い浮かべ、ノーなら自宅を思い浮かべてもらう、などという方法を使って、植物状態の人間との意思疎通をはかるのだ。そして、その実験は驚くべき結果を導き出す。

まだこの研究は途上にある。今後、さらに成果は上がるだろう。植物状態で、もう死んだも同然だと思われていても、実は何でもわかっているとしたら。小さな箱に押し込められて、身動きできない状態ですべてを見せられてるようなものだろう。そこで、自分の生命維持装置を外す相談などが行われていたとしたら、どんな気持ちになるだろう。

とりあえず、私も、私の家族も、たとえ植物状態に陥ろうと、絶対に死なせたりはせず、最後まで希望を持って意識があるものとして対応して欲しいものだ、と思った。

2018/12/28