神様のお父さん ユーカリの木の陰で2

神様のお父さん ユーカリの木の陰で2

3 北村薫 本の雑誌社

「中野のお父さん」シリーズの北村薫である。中野のお父さんじゃなくて、北村薫自身が語る、文学や映画や落語などのうんちく話である。登場人物は多岐にわたっていて、彼の広い知識と教養を心から楽しめる。こんなこと知ってるんだぜ、という偉ぶったところは一つもなく、一緒にその世界をただただ楽しめる。

樹木希林が亡くなる直前に撮った「日々是好日」という映画のエピソード。お茶のお師匠さんの役なのだが、お手前の方法など一切知らない。ところが、稽古させろ、という監督の指示に彼女は「稽古はしません」といったという。じゃあ、どうしたか。それは本を読まなくちゃね。というわけで、いま、森下典子の「青嵐の庭にすわる」を図書館に予約中である。

星新一の文体のすごさ、三島由紀夫に大変な無礼を働いた学生の話、「ジベルばら色ひこうしん」という大島弓子か萩尾元のマンガの題名みたいな皮膚病の話…。短文の連なりの中に、これでもかというくらい豊かな世界が広がっている。そして、それは読書へとつながる道でもある。

この人は、本当に本が好きなのだなあ。とても立派な文学者ではあるのだろうけれど、その部分では、良いお友達になれるかもしれない、なんて妄想してしまう温かい本である。