45 松重豊 毎日新聞出版
言わずと知れた「孤独のグルメ」の井の頭五郎さん。最近は星野源と音楽番組なんかもやっている。良い俳優さんだ。若いころ、蜷川スタジオに在籍して舞台をやっていたけれど、仕事がなくて力仕事のバイトを重ね、一時は俳優廃業すら考えていたのに、中年以降に仕事が増えてきたという苦労人。
内省的な人だとは思っていたが、なるほど、書いたものを読むとそれがより明らかになる。コロナ禍で仕事がなく家にいるしかない時期(若い頃はそんなことはいくらでもあったそうだが)、パソコンに向かって書いた妄想を編集者に送ったら本になることになった、ということだ。前半は小説、後半はエッセイ。役者の頭の中はこうなっているのか、と感心する。何をやっていても役柄と、どうそれを演じるか、でいっぱいになるのだなあ。
京都太秦近くの広隆寺の弥勒菩薩の話があって、なかなか良かった。私も学生時代に友達と京都旅行で交流時に行って、弥勒様の前に座り込んでしばらくぼんやりしていたものだ。本当に良い仏像である。中がくりぬいてあるから軽くて持ち運べる。だから、人々に守られ、火災や戦火を逃れることができた。空っぽの中には、仏像を見る人の心が入り込む。でも、次に会った時にはもう空っぽになっているんだそうだ。いい話だ。
先日テレビで、外食すると、食べている間、じっと見られている、と彼は話していた。そうだよなあ。五郎さんが食べるところ、みんな見たくなるものなあ。
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