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「精霊たちの家」イザベル・アジェンデ 河出書房新社
最初に事務連絡。私が読んだのは「国書刊行会」の本だが、現在入手できるのは河出書房版らしい。
「日本人の恋びと」で知ったイザベル・アジェンデのデビュー作である。いやあ、長かった、長かった。小さな活字で二段組、分厚い本。大河ドラマであった。新幹線に二回乗っても三分の一も進まない。一生読み終わらないかと思った。終わったけど。
チリのとある一家の歴史物語。何しろ作者はアジェンデの姪っ子でしょう、社会情勢や政治も絡んで、生々しいところも多々ある、それでいて不思議な物語でもある。
ニベア、クラーラ、ブランカ、アルバという四世代の女性たちを中心に、クラーラの夫となったエステーバン・トゥエルバがからんでいく。このトゥエルバが、実に、なんというか強烈なキャラクターだ。自己中心的で他者への想像力に乏しく、実行力に富んで、ただし自己の価値観に対しては敬虔なまでに誠実。これ、私の実父にちょっと似ている。だから、余計に感じるところが大きかったというか。
それに対する女性たちの個性的なこと、たくましいこと、共感能力の高いこと、そして、わがままなこと。結局のところ、トゥエルバも彼女たちに最後には屈服していくのがなんとも皮肉である。
「日本人の恋びと」が「嵐が丘」チックである、と感じたのだが、この本も、実は「嵐が丘」ではないか、と思った。世代を超え、あらゆる恨みを引きずりながら、恋は進展する。イザベル・アジェンデは「嵐が丘」の人なのだな、と思った。
読み終えるのに、時間と忍耐が必要だけど、読めば読んだだけの満足感は必ず得られる。勇気があれば、おすすめです。
2018/6/26