128 鈴木エイト 小学館
学生時代、原理研などというものが学内に跋扈していて、十分注意するように大学当局から何度も通知が出ていたのを覚えている。とても優秀なはずの友人の弟が東大で原理研に取り込まれて集団生活に入り込み、帰ってこないなんて噂話もあった。それからしばらく経って、芸能人が合同結婚式に参加したなどというニュースもあった。適当に誰かとくっつけられて、まとめて結婚しちゃうとは、またなんと乱暴な、と思った。それから何となく統一教会は話題にならなくなったので、もう勢いを失ったのかと思っていた。
昨年、安倍首相が銃撃されて久しぶりに統一教会の名前を聞いた。まだ活動していたのか、と驚いた。そこからさまざまな事実が明らかになって、なんと、そんなに深く自民党に入り込んでいたのか!!と驚いた。言われてみてようやく気がつくこともあった。子どもたちのPTA活動をしていた頃、なぜかいきなり学校での性教育がやり玉に挙げられているのを知って不思議に思ったことがある。避妊の方法や性行為の実態などを学校でしっかり教えるのはとても大事なことだと思っていたのに、そんなことまで教室で教えるなんて…という非難が行われていると耳にしたのだ。いや、それはむしろ教育現場でみんなに教えられるからこそ意味あることじゃないのかなあと思ったし、なんでいまさらそんなことを言い出すのだろうとも不審であった。あれも、統一教会の仕業だったのだ。
この本は、まだ統一教会報道がNGだったころから9年間、3000日以上にわたって自民党と統一教会の関係性を追求してきた筆者が、安倍首相が殺害されるまでの道筋を明らかにしたレポートである。丁寧な取材、明晰な証拠と分析に裏付けられており、これを読むといかに自民党が統一教会に取り入れられ、侵入され、支配されていったかが克明にわかる。それはもう、恐ろしいほどに。
あまりに綿密で丁寧な取材、事実関係の記述があるため、読み通すには根気がいる。だが、これを少しでも多くの人が読んでほしいと思う。なぜなら、申し開きができないほどに事実の裏付けに基づいた本であるからだ。これだけ明らかな事実がありながら、なぜ未だに自民党の議員は統一教会と繋がり続けているのか。それを思うと暗澹たる気持ちになる。