花桃実桃

花桃実桃

116 中島京子 中央公論社

久米島に避暑に行ってきた。もはや本州より沖縄のほうが涼しい。海風が入るからね。五日間の滞在に六冊用意したけど足りなくて電子本と夫の本を一冊追加したら帰って来れた。旅先では読書がはかどる。気を散らすものがないからなあ。

2011年刊の本。40代のシングル女子が会社を辞めて父の遺したアパート「花桃館」の一室に住み、大家となる。住民は変な人が多いのだが、どこか憎めない。面倒を見てくれる不動産屋も一癖あるがなかなか面白い。久しぶりに再会した高校時代の友人も時々支えになる。この世の人ではないような住人とも出会う。クロアチアの詩人、イヴァンも住人に加わる。彼との百人一首を介した会話は実に面白い。百人一首でこんなに笑えるとは知らなかった。

中島京子の良さが溢れた小説である。何歳であろうと、先が見えようと見えまいと、変であろうと普通であろうと、迷おうと困ろうと、人生はそれぞれに楽しく美しい。底辺を流れるユーモアが温かい良い本だった。

ところで、久米島は美しい島だったよ。夕景の写真を一枚、載せておくね。