86 小林聡美 文芸春秋
小林聡美は好きだ。本も何冊か読んでいるし、演技もいい。少し前、松重豊との中年の恋の映画「ツユクサ」を見た。この不器用さ、生真面目さはこの二人でこそだ、と思った。
このエッセイ集はコロナ禍に書かれたもの。基本、一人で家で過ごす中、時に茶柱が立っているのを見つけるように、ほんの少しでも良いこと、気が晴れるようなささやかなことがすくいとられている。ベランダ菜園の極小じゃがいもとか、ズームで参加するズンバのクラスとか、ピアノの練習とか。
有名な女優さんなのに、この人は、本当に地に足がついている。お姉さんとバスツアーに参加した話もあったが、マスク時代ならではなのかもしれない。きっと誰にも気づかれず、普通に紛れて楽しめたのだろうなあ。
中年一人暮らし。放っておいたら、今日も一日誰とも話していない、なんて日々。でも、生真面目に、それでいて楽しんだり喜んだりは忘れずに、地道に生きていく、背筋の伸びた人。小林聡美はかっこいい。
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