藤森照信作品集

藤森照信作品集

2021年10月19日

85 藤森照信 (著)増田彰久(写真) TOTO出版

分厚く重い写真集である。いつもは図書館本の受け取りは散歩のついでに私一人で行くのだが、予約してあったこの本が来たと聞いた時は夫が同行し、エイヤッとこれだけ担いで帰ったほどだ。何キロあるのだろう。ずっしりである。

藤森照信は夫がファンである。彼の作品の一つである多治見のモザイクタイルミュージアムは現物を見に行ったことがある。非常に面白い建物であった。

そもそも藤森氏は建築史の人であり、私は路上考現学で彼を知った。南伸坊などと一緒に路上の不思議なもの、役に立たないようなもの(トマソン)などを探して回る活動がオモシロイと思っていたのを覚えている。その後、「タンポポハウス」という彼の初期作品であるところの自邸の建築過程が新聞に連載されて、毎週楽しみにしていたものだ。屋根一面にたんぽぽを植えるという「本気か?」という発想が面白かった。その後、路上観察学会仲間の赤瀬川原平宅「ニラハウス」の建築過程も、たしか新聞紙上で発表されていたと思う。こちらは屋根にニラを生やすというもの。どこまでも植物を植え付けたいのだなあ、と感心したものだった。

それ以降、彼は本当に立派な建築家になっていき、様々な建築を手掛けて賞なども取っていった。そのすべての作品を、外観から内装から丁寧に写真に収め、自身の解説を加え、かつ英文翻訳も併記して作られているのがこの本である。英文がなければもう少し軽かっただろうになあ。

どの作品も、普通の建築家の発想からはぶっ飛んでおり、にょきにょきと足の生えた空高くある茶室や、ぶら下げられた部屋や、上に松を生やした屋根や、まるでキルティングのコートのようなトタンのコーテイングの施された家など、ただ事ではない。普通ではない。だが、見ていると実にわくわくする。

調べてみたら、彼の作品のとある一作が割とご近所にあるらしいことが分かった。今度、見に行ってみよう。楽しみである。