109 梨木香歩 鹿児島睦 ブルーシープ株式会社
陶芸家、鹿児島睦さんの展覧会が開かれるので、新作の器を見てそこからお話を作ってほしい。という依頼を受けた梨木香歩氏が、いくつもの器を選んで物語を書き、作り上げた。美しい絵本である。
ネット上で梨木氏の新作はないかなーと探していて突き当たったのがこの「蛇の棲む水たまり」。図書館で検索しても出てこない。ネットに表紙写真だけがあって、きれいな本だなとは思っていた。近所に、古いおでん屋さんを改装した実に個性的な本屋があるのだが、そこをぷらぷら歩いていたら発見。これは図書館で借りて読むような本ではなく、持っていて初めて意味がありそうだ。でも、そういう本をどんどん買っていたらまた置き場に困ってしまうしなあ、一年間くらいグジグジ悩もうかしら、と考えていたのに、あらら、気が付いたら買ってしまっていた。
もともと陶器が好きである。この絵本を構成している器はとても美しい。そして、それを選び、並べ、作り上げられた物語には心に沁みる強さがある。
もう一人の自分を見つけて、よく見る。よくよく見る、そうすればなりたいものになれる。でも外から見たら変わらない。そんなことどうでもよくなる。そういう場所を見つけたけれど、また元の場所に帰っていく。内側に、なりたい自分を抱えながら。そんな、行きて帰りし物語。
買ってよかったかも。なんか心がしくしくしそうな日は、これをパラパラめくるといいかも。そんな風に思える本であった。
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