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「読まされ図書室」小林聡美 宝島社
小林聡美は賢い人だ。真っ直ぐな人だ。この人のエッセイを読むたびに、その人となりに惚れなおす。かっこいいよなあ、と思う。
この本は小林聡美が14人の人に推薦された本を読んで感想を書いたものだ。自分で選んだ本ではないから、読むのに苦労したり、思いがけない世界がひらけたりする。小林さんは、自分の生きているその場の生活にしっかりと足をつけながら、薦められた本の世界に入っていき、自分なりにそこを味わってから帰ってくる。その過程を見ているのがとても楽しい。
本当にかっこよかったのに、先に逝ってしまわれた先輩、佐野洋子さんの「死ぬ気まんまん」を、同じようにかっこいい小林聡美が読む。こうはなれないけれど、覚悟は決めようと思う、と読みながら思う小林聡美はかっこいい。よしもとばななとの対談が載っているのだが、それも佐野さんの話で持ちきりだ。随分前によいもとさんは佐野さんと対談したことがあるのだけれど、その時佐野さんの調子が悪くてうまく対談にならなくて、ふたりでお茶を飲みに行った。そしたらしばらくして谷川俊太郎氏が迎えに来て「君、大丈夫だったか?」と聞いたそうだ。「なんだかものすごくいいものを見たと思いながら帰った」とよしもとさんは言っている。私もその時に谷川さんの顔から声の質まで想像してしまって、ああ、いいなあと思った。
飼い猫の話が描かれているのだけれど、その中で「一家離散」という言葉が出てくる。飼い猫のホイちゃんは、大好きだった飼い犬の「とび」と一家離散の後、二度と会うこともなく老猫になった、と。さらりと書かれていることに感心してしまった。谷川さんと別れた佐野さんも、三谷さんと別れた聡美さんも、一人できっぱりと生きていているのがかっこいい。
この中に登場する、小林聡美が読んだ個性的な本の中の何冊かは、今、我が家にある。夫が早速図書館から借りたのだ。さあ、私も読まなくては。
2015/6/16