78 宮田珠己 亜紀書房
元バックパッカーで、旅が好きで好きでならない宮田珠己が、コロナ禍で旅ができなくなり、仕方なく家の近所を散歩するようになったのが、そもそもの始まり。旅行できないことへの腹いせと、体力維持が目的だったのに、コロナが収まってからも散歩が習慣化した。そこへ亜紀書房の編集者から散歩エッセイの話が持ちかけられ、できたのがこの本である。
最初は鉄塔やガスタンク、暗渠、配管、看板などの散歩マニアの注目するテーマに沿っていたのだが、そのうちに、そこら中に不思議があふれるスポットをみつけ、平凡な町の中にしれっと存在する驚異に出会うようになった。散歩に付き合う編集者の西山君には、道中、目指した美味しいスイーツのお店が必ず休業日だったり、つぶれていたり、売り切れだったりするというジンクスがあった。これは彼の前世のおこないによるものだと作者は断言している(笑)。
思えば我々夫婦も旅好きである。夫の定年退職後は世界中を旅しようと昔から決めていたのに、退職日はコロナ禍真っただ中であった。なので我々は自宅近辺および日帰りでバス、電車、自転車で行ける範囲を散歩しまくり、この町が意外に歴史的な背景を持っていることや、思わぬ遺跡や史跡が多数あることに気が付いたものであった。だから、宮田珠己のいいたいことは、すごくわかる。平凡な町にも、不思議は満ちている。そして、それとの出会いはとても楽しい。
ちなみにこの本は、ずっと積まれたままになっていた本であったが、ついについに読了した。そして、我々はまた、来週から半月ほどの旅に出る。今度はできるだけ電子書籍を持っていこうとは思っている。前回、本を十冊以上持っていって重さに苦労したから。というわけで、来週からしばらく更新が途絶えるけど、私は元気(なはず)です。転ばなければ((笑)。