逃げ続けたら世界一周していました

逃げ続けたら世界一周していました

119 白石あづさ 岩波ジュニア新書

夫が「これすごくいい本だった」というので手に取った本。確かに良い本でした。

幼稚園の頃から集団になじめなくて、みんなと同じようにできなくて、どこかに逃げたい逃げたいと思っていた作者。就職して四年後、貯まったお金で意を決して海外に逃亡を図ったら、そこから人生が変わった。将来のために今我慢するとか、人と同じようにできなければいけないとか、それだけが価値ではない。世界中にはいろんな価値観で生きている人たちがいる。そして、信じられないくらい、親切な人たちもいる。

この流れ、私にはよくわかる。私も集団になじめない子であった。転勤族の子なので、たとえその場から浮いていたとしても、数年我慢すればここではないどこかへ移動できるということが、もはや救いになっていた。かといって、あたらしく行った場所でうまく立ち回れるかというと全然そうではなかったが。大人になって、今、やたらと旅しまくっていて気がつくのは、世界は親切に満ちているということ、自分らしく生きている人が大勢いるということ。決まった枠にとらわれる必要なんて何にもないということ。

バリ島でイソップどうわ「アリとキリギリス」を子どもに読んでも評価が違うという話が興味深かった。冬に備えて食べ物を保存しても暑くて腐ってしまうし、立派な家を建てても湿気ですぐダメになる。必死に将来の準備をして働くアリよりも毎日歌って踊って楽しく過ごせばいい。バリは暖かいから年に三回お米がとれるし、パパイヤを食べて種を吐き出せばそこから芽が出てまた生えてくる。食べ物が足りなければ、多く持っている人が分けてくれる。その考え方だって正解なのだ、と作者は考える。そうだよねー。イソップどうわは北の国の話なのかも。

今いる場所が辛くてならなかったり、ひどいいじめにあって死んでしまいたいと思っていたら、逃げていいんだ、と作者は書く。自分は逃げた。逃げることで人生が広がった。逃げて気が済んで戻るたびに、弱くて臆病だった自分が少しずつ変わっていった、と。そう、この本は岩波ジュニア新書だからね。若い人たち、子どもたちにぜひ読んでほしい。あなたが今いる場所だけが世界ではないからね。逃げて、別の場所に行ってもいいんだよ。

旅は世界を広げる。全然違う価値観との出会いは人生観を明るくしてくれる。そして、世界中に好きな国、思い出深い国が増えることは、確実に平和につながる。若い人には旅をしてほしい。できれば海外に飛び出してほしい。私も、そう願っている。