57 城山真一 光文社
初めましての作者。本の雑誌社の杉江さんが褒めていたと思う。それだけで手に取ったので全く先入観なし。なんとミステリだったのね、と読み始めてわかった。
金沢ひがし茶屋町で人気だった芸妓のなつ江が殺された。元新聞記者で今は刑事の小豆沢という女性が事件を追う。なつ江の周囲の水引細工店の主人や息子、従業員。仲の良かった老舗料理店の板長、ひいきの和菓子店、老人施設の経営者。様々な人々のかかわりや、そこで生まれた誤解を小豆沢はきれいに紐解いていく。浅野川雨情という曲と踊りに秘められた謎。それを踊るはずだった女性たちの人生や歴史が少しずつ明らかになっていく。
犯人捜しのミステリではあるのだけれど、その謎解きの過程で様々な人間模様が、まるで短編のように描き出される。真心や愛情が誤解され、うまく受け止められないまま過ぎてしまった月日を小豆沢がやさしく解き明かす。悪い人はほとんど出てこない。ただ、思いがうまく通じ合わなかったことを明かしていく。人への信頼や誠実さというものが根底にあるミステリだと感じた。
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