21 有吉佐和子 河出書房
1962年の作品だという。なるほど、たしかに社会的背景は古臭い感じがするが、内容は全然古くない。ちゃんと今に通じる強いテーマがあり、作者の意思が感じられる。有吉佐和子、すごいなあ。
新宿にある東京デパートに勤める同じ高校出身の女性三人の物語。一人は呉服売り場、一人は食糧品売り場で働き、一人はエレベーターガールである。それぞれの職場での人間模様、働き方、そしてそこで起きる変化。タイプの違う三人を生き生きと描いている。厚い本なのに、少しも飽きない。
女性は結婚したら家庭に入るのが一般的な時代の話である。たとえどんなに長く働いていても、女性はいつまでも一般職員のまま。男性社員は後から入ってきても、どんどん出世していく。でも、つい最近入ったばかりの男子社員より私のほうが先輩なんだからね、という気持ちでいる呉服売り場の女性。仕事はしっかりやる。言いたいことは言う。小気味いい女性である。そんな女性に反発しながらも惹かれていく新入り男子職員との関係がなかなか良い。
食料品売場では、デパートに品を置いてもらっている取引先会社の職員が、デパートの主任にねちねちいじめられるのに腹を立てる女性。頑張りつつも、立場上、負けてよそに移動させられる取引先職員と良い関係を結んでいく。立場とか、給料の額とかではない人間の価値を見極められる女性である。
一方、美貌を武器にエレベーターガールとして働く女性は、引く手あまたで様々な男性とデートを重ねるが、宣伝部の妻子ある男性に惹かれていく。世間の枠にとらわれず、自分のやりたいことを選ばずにはいられない女性である。
三者三様の生き方は、どれも時代を超えて今に通じている。たしかに時代は変わったが、女性が働くということ、伴侶を得て生きていくことの根底はいつも同じである。そこに作者の鋭い視点を感じる。
それにしても。昨年亡くなった母は、父が亡くなった後、ぽつぽつと自分が若い頃の自慢話(?)をするようになった。会社勤めをしている間に、どれだけ自分が男性社員に声をかけられたか、どれだけデートに誘われたか、なんて話を、結構嬉しそうにしていたものだ。時代背景はちょうどこの物語の少しだけ前のこと。なんだか、登場人物の中に母もいそうな気がして、私なりにちょっと濃い目の味付けをしながら読んだのかもしれない。
有吉佐和子。様々なテーマを扱い、常に深く掘り下げ、何十年経っても色褪せない物語を書いた人だ。もっと長生きしてほしかったなあ。
