青い鳥、飛んだ

青い鳥、飛んだ

113 丸山正樹 角川春樹事務所

正直に言えば、苦しかった。途中で読み止めようかと思った。それでも最後まで読んだのは、どんな締めくくり方をするのか知りたかったからだ。丸山正樹なら、投げ出すようなことはしないだろうという信頼があった。そして、それは当たった。当たったが、やっぱり最後まで辛かった。じゃあ、どうすれば。これからどうやって。そんなことをぐるぐると考えている。

思い出したのは上間陽子の「裸足で逃げる」である。「青い鳥、飛んだ」に登場したのと似たような女の子たちの現実のリアルがあの本には描かれていた。でも、読んでいてここまで辛くはなかった。なぜだろう。上間氏の彼女達との距離の取り方のせいなのか?それとも、当事者である女の子たちが、まさしく今を生きていたからなのか?ルポだからか?まだよくわからない。ただ、上間氏は彼女たちと真正面から向き合っていたし、これからも全身で一生をかけて彼女たちについて考え続けるのだと思った。そして、それは確かに希望だと私は感じたのだ。…と書いたけれど、上間氏の本だって辛かったことは間違いない。思い出せば、あの本だって何度も読み止めたのだった。

コンビニ店長は、万引き犯を捕まえようとして、殺してしまった。そこから人生の歯車が狂い出す。彼がそれまでに捕まえた万引き犯たちも、それぞれに人生が変容せざるを得なかった。そうした何人かの人たちの日々が絡まり合い、また別の事件が起き、探したり、逃げたり、追いかけたり。正しいことって何なのか、仕事って何なのか、苦しい時、どうそれから逃げるのか、立ち向かうのか。そんなことを突きつけられる小説。ネットに溢れる、正義感に名を借りた、人を貶め、苦しめる数々の発言や動画も登場する。密室でレイプされた女性がそれを告発することの困難さも。今現実に起きているいくつもの事件、事象を思い出して気持ちはどんどん暗くなる。でも、どこかに希望はなければ。人は誰かを助けたいし、助け合いたいものだということも、信じていたい。