マイルが溜まっているのでどこかいこうか、と前から夫と話していたので、良い機会だと青森に行くことにしました。出雲、金沢、厳島、函館などなど幾つかの候補地からの選定です。夫はバックギャモンの青森オープンに二度ほど参加しているので何度か足を運んだことがある場所ですが、まあ付き合ってやろうと言ってくれたので、良かった良かった。というわけで、青森二泊三日の旅、スタートです。
お昼の便しか取れなかったのでゆっくり目の出発です。羽田でお昼に担々麺とベトナム風春巻きを食べます。飛行機にのるときはいつも行く空港内の中華屋さんです。
飛行機は三列三列の並びの少し小さめ。高いところが嫌いな私は、小さい飛行機もちょっと苦手です。でも、イヤホンで落語を聞いているうちにぐっすり寝てしまいました。あっという間に青森です。
空港からはタクシーで三内丸山遺跡に向かいます。公共交通機関を利用して行こうとすると二時間以上かかるのに、タクシーだと30分かかりません。今回の旅行の計画を立てる段階で各種時刻表とにらめっこしたのですが、バスや電車を使うと、ものすごく非効率的なのがわかりました。新幹線が通ったおかげで在来線はずたずただし、バスも便数が少なすぎる。路線案内で調べると37分歩けなんて指示が出てきて、免許を持たない我々は、タクシー頼みになるしかありません。
というわけで、三内丸山遺跡です。縄文時遊館という立派な建物が建っていて、そこを通り抜けると遺跡に入れます。ちょうどガイドの時間だったので、ガイドツアーに参加します。
施設を抜けると目に染みるような緑の広場が広がっています。
ここは今から4000年から5500年位前に縄文人が定住していた跡だそうです。野球場を作ろうと掘ってみたらじゃんじゃん土器やら遺跡やらでてきて、それどころじゃない!となったそうです。
ちょっとだけ土器が出たり、住居跡が見つかったりの遺跡は日本のあちこちにあるけれど、これだけ集団でムラの跡が見つかったのは本当に珍しいらしい。まだまだ発掘は続いていて、新しい発見もありそうです。
水が豊かな場所なので、地下水が滲み出て、本来なら朽ち果ててしまうような栗の樹の柱の根元が4000年以上もしっかりと残されたそうです。
緑が溢れ、水が豊かな土地です。日本は水が豊かで恵まれていたために縄文時代が長く続き、大文明が起きなかったと「教養としての世界史の読み方」で読みましたが、たしかにこれだけ豊かだったら、誰かと競い合ったり闘ったりしようとは思わないかも。それはそれで幸福なことで、大文明が発達するだけが正解じゃないだろうと改めて思います。
遺跡の埋まっていた状況がわかるように地層を縦割りにした状態で保存していある場所も見ました。土器などいろいろなものがまだまだたくさん入っているのが見た目にもわかりました。
縄文時代の長さの単位は32センチだそうです。柱や道路の後など、すべて32センチの倍数の幅で作られています。
太い柱の跡が残されていて、そこには立派な栗の木の残骸がありました。たぶん、こんな感じだったんじゃないかと再現されたのがこれです。古代の人は、これにどうやって登ったんでしょうね。
天気が良かったせいか、緑が美しかったせいか、ここは本当に気持ちのいい場所で、4000年以上も前、縄文人はきっと幸せに暮らしていたんだろうなあと感じられました。まだ蓄財もなく、階級もなく、自然の中で助け合って生きていた人びと。その頃も、いまも、人は同じように泣いたり笑ったりして生きていた、と思ったら、なんだかいい気分になりました。
ガイドツアーが終わり、施設内のミュージアムを見学してからお隣にある県立美術館に移動します。きれいな芝生の道を歩いて、美術館の敷地へ。「あおもり犬はこちら」の立札に従ってジグザグ曲がって、階段を上がったり降りたり。誰もいないし、どこへ続くんだ・・・と不安になりだしたら、いました、「あおもり犬」。
奈良美智の大きな作品です。足元にいるのが人間です。大きさ、わかりますね?これ、美術館内からはガラス越しに見られますが、現物に触りたければ建物を一旦出て、ぐるぐるぐる~っと回っていかなければなりません。我々は遺跡からきたので裏口から回っちゃったんですね。
そこからまたぐるぐる歩いて、やっと美術館内に入ったら、エレベーターで一度下がってチケットを買ってね、と言われて、また移動して。展示は五時までですけど大丈夫?と尋ねられたその時点で四時を少し回っていました。
常設展はシャガールから始まって棟方志功や奈良美智の作品などが展示されています。すごく人が少なくて、ほぼ貸切状態。ひと通り見終わって通路を行くと違う展示場所があって、なんとそこではいがらしみきおの原画展が。チケットを買おうとすると、「美術館とは違います」「時間が少ししかありません」「漫画の原画なんですよ」と何度も念を押されます。美術館のつもりで入ったら、ぼのぼのやらシマリスやらしかいなかったと怒る人がいるからかしら。いやいや、我が家はいがらしみきお、ファンですから。懐かしい「ぼのぼの」第一巻の原画からあって、楽しめました。
喉が渇いたのでコーラを飲んで、それから道路を渡ってねぷたん号というバスに乗り込みます。乗客は五、六人程度。新青森駅で老夫婦が乗ってきて、フェリー乗り場で降りました。新幹線でここまで来て、ここからフェリーに乗るのかな、と夫が不思議そうに言います。それなら函館まで新幹線に乗っていけばいいのにねえ。
青森駅に到着。切符を買って青い森鉄道に乗ります。ニ両編成ですが、乗り降りは一両目の前のドアだけ。運転手さんだけのワンマン運転です。浅虫温泉で下車。宿は駅から歩いて一分ほどの近さでした。窓からは湯之島と夕日が美しく見えました。
夕食後は津軽蛇味線の演奏がロビーで行われました。バチが打楽器のようにばちばちと鳴っていて、耳に響きました。
「青森旅行記2」へ続く
2017/6/2