91 養老孟司 中川恵一 エクスナレッジ
「養老先生、病院へ行く」の続編。前作では、体調の悪くなった養老先生が、病院は大嫌いだけど、家族もうるさいし、しょうがないから受診してみるか、と東大病院の教え子に連絡を取って病院に行った話。診察を受けたら心筋梗塞がわかって、そのままステントを入れる手術を受けることに。もう少し遅かったらお葬式を出すところだった。入院してもらいます、と言われて「でも、『山の上』のてんぷらを予約してるのに・・・」という返答がすこぶる面白かったのだけど、事態は大変であった。
続編の広告を新聞で見たとき、「あ!!養老先生、また体調を崩されたのか?入院か?」と心配になった。慌てて本を予約したんだけど、届くまで結構な時間がかかって、でも、その間に養老先生の訃報は聞かなかったので、大丈夫かな?なんて考えていたら。何のことはない、東大病院に通うのをやめてしまって一年以上たったし、久しぶりに再診を受けてみるか、という話なのだった。脅かさないでよ。
養老先生は処方された薬をきちんと飲んでらして、お元気だった。出された薬はちょうど九錠。「九錠を守るのが私の使命です」って。だよねー。発見された大腸のポリープも胃のピロリ菌も除去するつもりはない。だって、ポリープがガン化するのに10年から20年かかるっていうし、ピロリ菌も保持したまますでに80年生きていて、まだガン化してないのだから、除去する意味が分からない、と。これは正しい判断だと思う。
重度の糖尿病ではあるのだけれど、16時間断食をやったらヘモグロビンA1cが下がったと養老先生は主張する。共著者の中川先生は、養老先生の場合は、偶々効果があったかもしれないけれど、読者が安易に真似するのはどうかと思う、と釘を刺している。養老先生だって九錠もの薬を飲んでいるのだから、単に薬が効いただけのかもしれないしね。
薬はこわい、難しい。実は私も持病のための薬を今年から飲み始めた。そうしたら、なんだかお腹が張って、げっぷがやたらと出て、どうにも息苦しい。でも、我慢していれば効果が出るのかな、と耐えていたら、ようやく、段々慣れてきた。と、その矢先に全身に蕁麻疹が。それこそ頭のてっぺんから足の先まで、指の間や耳たぶの裏に至るまで、体中隈なく地図状に赤く腫れあがり、薄まっては表れ、薄まっては表れ、寒気と熱気が同時に押し寄せ、体中がかゆく、眠れないほどになった。それが薬のせいかどうかは実際には不明だ。が、受診したらとりあえず持病の薬は中断しようということになった。じんましんは、抗ヒスタミン剤だけではおさまらず、ステロイドまで使って何とかおさまった。その後、顔がひどくむくみあがるおまけまでついて、さんざんであった。なぜ、どうしてこうなったのか、がわからないだけに、いまだに不安である。
そんなこんなで、病院嫌いの養老先生にはシンパシーがあるのだが、だが、やっぱり病気はコントロールしたいし、もう少しは長生きして人生を楽しみたい。養老先生の状態は、他人ごとじゃないのだ。
我々は、気が付いたら存在していたのだから、気が付いたら死んじゃってる、でいいんじゃないか、と養老先生は言う。そうだよなー、とは思う。そうではあるけれど、まだやりたいことはたくさんあるからね。医療とできるだけ距離をとりたい、と自身も医者のくせに言う養老先生のご著書をまだまだ読みたい私は、適度に病院と付き合いながら、何とかこれからもやっていきたいな、と思う。養老先生も、どうかお元気でいらしてくださいませ。