魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史

魔窟 知られざる「日大帝国」興亡の歴史

58 森功 東洋経済新報社

日大って株式会社なんだって。学生時代、そんな噂話を聞いたことがある。日本各地に大量の系列高校をもち、あらゆる学部を兼ね備え、数えきれない学生数のいる大学。そうか、株式会社にするくらい儲かるんだろうな、きっと。日大には何の縁もなかったのでその程度の認識をもっただけだった。

この本は日大の開校から現在に至るまでの様々な事件を大量の資料や調査、インタビューによって描き出している。例のアメリカンフットボールの暴力事件や麻薬問題、そして元理事長らの不祥事などなどで注目を浴びた昨今ではあるが、その根底には長い長い歴史があったことがわかる。そもそもが利権や政治家、スポーツ界との癒着、あるいは暴力団との関係性までもが続いていたことが明らかにされている。登場する政治家の名前の数々にはうんざりする。彼らの多くは、また別の大学問題や、現在の学術会議問題にも絡んでくる人たちでもある。

大学は学問をする場所である。学問とは、とどのつまりは人類の幸福に寄与するものである、と私は率直に考えている。学問に様々なジャンルはあれど、それらはすべて最終的には誰もが幸せになれる世の中になるにはどうしたらいいのか、という大きな問いに答えるための道筋を探し出すものである、と。だが、そんなことは単なるお花畑な理想なのか。大学を運営するということが、個人を利し、巨額の利益を生み、権力を生み支えることに繋がり、それこそが存在意義ですらある…かのように見えてくる。正直、途中で気分が悪くなり、読み進めるのが苦痛ですらあった。

あの大規模な学生を抱える日大が、2024年には入学志願者数を二万二千人も減らしたという。まあ、そうなるよなあと思う。あまりにもダーティなイメージが付いてしまっているからなあ。

林真理子理事長はどうするつもりなのだろう。文学界に大きな権力を持つ彼女に批判的なこの本は大出版社からは出してもらえず、文学とあまり関係なさそうな出版社から刊行された。それもまた、権力構造のひとつである。