DVD「6人の放送作家と1人の千原ジュニア」
今をときめく6人の放送作家が構成演出をする。普段、コントも漫才も、全部自分で台本を描くジュニアが、自分をまな板に乗せて、6人の作家に料理される。ほとんどが、初めて仕事をする相手だったというのだけれど、絶対、みんな、ものすごく緊張して、苦しんで、そして、すごーく楽しんだろうな、と思う。良い舞台を見た後は、その舞台を作ったすべての人たちに嫉妬を感じてしまうのだけれど、私はこのDVDで嫉妬の嵐になった。
1.話のモルモット
15秒でお兄さんにまつわる面白い話をして、と要求される。カウントが出るので、ぴったり15秒で、笑える話をひとつ。次に、その話を、今日は2月26日だから2分26秒かけて話してみて。次に、お兄さんの年齢36歳にちなんで、36秒で、お兄さん目線で同じ話を。次は、生年月日にちなんで、45秒で、駅員目線で。では桂三枝が、楽屋で弟子にその話を聞かせるコンセプトで、34秒で・・・高倉健さんに初めて会って、緊張しつつ、75秒でその話を・・。など、次々と時間を角度を変えて、同じ話をさせる。これが、見事に決まるのだ。
(この企画はよほど面白かったらしく、のちに某深夜番組で、この作家が「話術王選手権」として企画、いまだに続いている)
2.落語
古典落語「子別れ」をジュニアバージョンで。これはかなり緊張していた。落語は奥が深いね、でも、ここまでやりこなしているのはすごい。感嘆した。ジュニア自身も「スイッチが入った。またやりたい」といっている。緊張しすぎて、翌日、原因不明の高熱が出たそうだが、「急性落語膜炎」といっていた。
3.「24」
24枚のパネルでできた小さな箱に閉じ込められたジュニア。様々な課題をクリアするごとに、パネルが一枚、外される。さて、脱出できるのか・・。
本当にごくちっちゃな箱で、たぶん、入るのはとてもたいへんだったと思う。むちゃくちゃな課題ばかり出されるのに、果敢にチャレンジしていて、その表情があまりに豊かなので驚いた。作家も、「顔芸やなあ・・」と副音声で。これは、視覚的にきれいな場面があるのと、構成自体は単純に楽しめるので、おちびも気に入って、二度も見て、大笑いしていた。
4.「愛の確認」
ジュニアにまつわるある偽の事件を周囲の芸人に流して、その反応を見る。最後に、ジュニアの「大喜利葬」(花束の代わりに大喜利のお題をたくさん棺おけに入れる)になり、あるお題に対してジュニアがぴたりと答えて、終わる。
これは、ラストがあまりに決まりすぎていたので、最初から決まっていたのかと思ったら、その場でいきなり答えたのだそうだ。あまりに見事だったので、その続きがあるにもかかわらず、作家が「ここで暗転」と指示して終わらせた、と副音声で言っていた。ちょっとすごすぎる決まり方。でも、ジュニアにはいつも、死や葬式の話がついて回る。どうしてもそうなってしまう。みんな、同じ事を感じているのだな・・。
5.「終わりからはじめよう」
ジュニアが人生で一番の大怪我をしたときの話を、逆回しに展開する。これは難しいと思うよ。話が逆に進むので、前の話を踏まえて、今話している、状態を逆進するのだから。最初は、何がなんだかわからなくて、だんだん理解し始めて、そして、ああ、とわかって、この緊張と緩和の感覚は見事だと思う。それにしても、そんなひどい事故を笑いに昇華してして、これっぽっちも悲惨感を与えないのは、何なんだろう。絶対にじめつかない。これが、ジュニアの凄みだ。
6.「福本和枝」
私はこれが一番好きかも。「タイガー&ドラゴン」の宮藤官九郎が作家。ベテランシャンソン歌手が31周年リサイタルを開くという設定。人生を振り返った歌と語りなんだけど、まあ、女装したジュニアの気持ちよさそうな事と言ったら!ひどく下手な歌を、見事に熱唱して、それが決まってしまう。一番伸び伸びしていたと思う。本人も、一番楽だったと言っていた。
2007/4/4