おさるになるひ

おさるになるひ

2021年7月24日

「おさるになるひ」いとうひろし

四年生の読み聞かせです。
最初、三年生の担当だったのに、直前に頼まれて四年生に変更になってしまい、ちょっと迷ったのですが、四年生でもこれは面白かろうと、そのまま読んでみました。

>こんど、ぼくに、おとうとが できます。
いもうとかも しれません。
ぼくのおかあさんが、あかちゃんを うむんです。
うまれてくるあかちゃんは、やっぱり おさるだそうです。
おさるのおかあさんからは、おさるのあかちゃん。
なんだか ちょっぴり つまらないな、と おもいます。

>だけど、どうしても ふしぎです。
ぼくは、うまれた ときの ことなんて、ぜんぜん おぼえて いません。(中略)
ある ひ、きが ついたら、おさるの ぼくが いました。
ぼくは ほんとに、おかあさんから うまれたのでしょうか。
(「おさるになるひ」いとうひろし より引用)

遠い昔、息子があんまりかわいくて、「お母さんの子に生まれてきてくれてありがとう!」と言ったとき、彼は、本当に困ったような顔をして、「でも、僕、本当のことを言うと、選んで生まれてきたわけじゃないんだよ。気が付いたら、このうちにいたんだよ。」と教えてくれました。
そんなことを思い出します。

自分が生まれてきたって、どういうことだろう。これからずっといきていくって、どんなことだろう。わけのわからない、そんな疑問に取り付かれて、なんだか急に怖くなった子ども時代も思い出します。あれは、私が三、四年生の頃でした。

この本は、小学一年生から と裏表紙に書いてあります。字も大きいし、絵もたくさんあります。でも、「そんな小さい子向けの本なんて読んでないで、もっと字のたくさんある、勉強になる本を読みなさい」なんて言っちゃいけません。この本には、深い深い哲学があります。真実があります。

四年生たちは、ほーっという顔をして、最後まで静かに聞いてくれました。読み終えたら、にっこり笑ってくれました。
ああ、よかった。

2008/4/15