おそろし

おそろし

2021年7月24日

「おそろし 三島屋変調百物語事始」 宮部みゆき

読みたい読みたいと思いながら、分厚さ重さに負けて、後回しにしていた本。読み始めたら、あっという間でした。

つらい出来事にあって、叔父夫婦の店、三島屋に預けられた17歳のおちかという娘が主人公のお話。
おちかの心の傷を癒そうと、周囲の人間が、あれこれ心を砕き、ふしぎな物語を語る何人かの人を呼び入れて、聞きながら起きる数々の出来事、そして、終結。

つらい出来事の、何がどうつらいのか、それは受け止める人によってそれぞれに違う。周囲がいくら慰めても、それが、的を射ていないものだったり、理解が足りなかったりすると、むしろ本人を傷つけたりもする。
その一方で、本人も、自分で出来事を違った方向で受け止めたり、誤解していたりすることもある。
互いに互いを思いやることで、さらに傷が増すこともある。

起きてしまったことは仕方ないけれど、それをこれからどう受け止めて、どう生きていくか。
最後に決めるのは自分自身でしかない。

宮部みゆきは、高卒で働きながら、モノを書く事を始めた人だ。ずいぶん前だけれど、どこかで、「良い大学」を出た編集者に心無いことを言われていやな思いをいたことが、さらっとかかれていたことを思い出す。
この物語に出てくる松太郎ーおちかと兄弟の様に育てられながらも、厳然と身分の違いを思い知らされていた人物に、そのエピソードを思い出したりもした。深読みしすぎかもしれないけれど。

私にも、会って謝りたいと思う人が何人かいる。
でも、傷つけてしまった、私が間違っていた、という思いを心に抱えながら、それに学んでこれからを生きていくしかないのだろうな、と改めて思ったりもした。

2009/4/14