おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」

おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」

27  谷口真由美 小学館新書

私はラグビーにほとんど興味がない。試合も、ほぼ見たことがない。なので、ラグビー協会で何が起きようと基本的にはどうでもいいことだと思っていたが、この本を読むと、そうでもないぞ。この本に書かれていることは、ラグビーという競技だけの問題ではなく、この世にはびこるおっさんたちの悪習がいかにこの国をガチガチに固め、より良くなることから遠ざけてるのかという問題である。

森元総理が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります。これもうちの「恥」を言いますが、ラグビー協会は今までの倍時間がかる」と言った例の女性蔑視発言は、実はこの本の作者、谷口真由美氏のことを言っているらしい。

2022年1月にラグビー新リーグが開幕した。その発足に向け中心的な役割を果たしていたのが、前年まで法人準備室長・審査委員長を務めた谷口真由美氏だ。もともとは憲法学者である彼女は、スポーツ界も女性に門戸を開くべきだということから、ぜひにもと招聘された。ところが、真剣にまじめに職務を果たそうとすると、すべてが覆されていく。大事な会議だと言われて出席すれば、事前に私的な会合で決められたことを報告されるだけのシャンシャン会議となり、質問すれば煙たがれる。上のものには皆絶対服従、これまでの習慣を変えるつもりは一切なく、新しい提案には「リスクが大きい」と退け、たとえ基準をつくって審査した結果であっても忖度でひっくり返される・・・。挙句の果てに、女性蔑視発言。

これはもう、スポーツだけの問題ではない。読んでいると思い出す、思い出す。学校や職場、あるいは家庭で何度、同じような壁にぶつかったか。女は黙っとれ、だけではなく。長い物には巻かれろ、自己主張するな、新しい提案は事前に上のものを丁寧に説得してからでないと無理。日本の社会が硬直化しているのは、ぜーんぶ、こういう悪習のせいなのよねー、と言いたくなってくる。

ラグビー協会の皆々様は、ぜひこの本を読んで深く深く反省していただきたい。なんて、そんなことができるなら、彼女をやめさせてはいないわよねっ!!