おらおらでひとりいぐも

2021年7月24日

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「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子 河出書房新社

「ある男」が頭でっかちな男の小説なら、これは頭でっかちな女の小説だ。もう、ずっとなにか考えている、深く深く考えている、そういう人間の小説。

「ある男」は思考が社会に向かったが、「おらおらでひとりいぐも」の桃子さんは内面に向かう。男と女の違い、なんて片付けるのは簡単過ぎる。どっちもあるな、私には、と思う。みんな多かれ少なかれ、どっちもあるんだよな、と思う。

桃子さんは、支配的な親から逃れ、都会にでたが、同じ方言を堂々と使うオトコに出会って結婚した。幸せな結婚だった。でも、時が経ち、一人になった。孤独になった。桃子さんは一人で話すのだ。たくさんの者たちと、毎日、話すのだ。

私もこんな老女になるのかも、と思う。その時に自分を表現できる豊かな方言が、私にはない。それは寂しいかも。暖かく美しい言葉を持たずして、私は一人で、勇敢に孤独と戦えるだろうか。

2019/1/25