かがみの孤城 上・下

かがみの孤城 上・下

23 辻村深月 ポプラ文庫

「名前探しの放課後」以来の辻村深月。2018年本屋大賞受賞作で映画化もされている。話題になっているのは知っていたが、なんとなく手が出せないでいた。

「うまいんだけど、大感動、というわけでもないよな。それはなぜなんだろう、と自分でも不思議である。」と前作でもブログに書いたけれど、この作品でも同じように感じる。とても面白いし、引き込まれる。上手だなーと思うんだけど、でも、うんうんそうだよねー、と共感できるかというと、なんだか距離感というか、違和感が残る。これはもう、相性というものなのか。

不登校やひきこもりの子どもたちの話。学校に行けなくなった子どもたちが、鏡を通ってお城に集まり、一年かけて謎を解く。知らない同士が少しずつ距離を縮め、互いの事情や気持ちを分かり合ったり、時に諍い合ったり。支え合う、助け合うということも知っていく。

私は不登校の子ではなかった。学校に行きたくない日など山ほどあったけれど、行かないなどと言い出したらもっと恐ろしいことが起きるとしか思えなかったから学校に行くしかなかった。不登校ができる子はいいなあ、とすら思ったものだ。そんなひねた感情が、この物語への違和感を作り出しているのだろうか。

やや退屈な場面もあったが、構成は面白いし、後半は一気に駆け抜ける。途中で物語のからくりに気づくところはあるが、気づくように書かれているのだろうなあとも思う。人物の関係性も、なんとなく見えてくるからこそ、エンディングにも納得できるのだろう。よくできた物語だ、と思う。

この物語を読んで、学校に行きづらいと思っている子どもたちはどう感じるのだろう。何らかの助けになるのだろうか。前を向く力になるのだろうか。そうだといいなあ。

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サワキ

読書と旅とお笑いが好き。読んだ本の感想や紹介を中心に、日々の出来事なども、時々書いていきます。

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