きみがくれたぼくの星空

きみがくれたぼくの星空

2021年7月24日

「きみがくれたぼくの星空」ロレンツォ・リカルツィ

前に紹介した「パリ左岸のピアノ工房」が意外に好評だったので、この本も紹介したくなりました。パルティオの日記で、一年前に紹介したのですが、あっさり書いたせいか、実際に読んだという反応がいただけなくて。でも、私としては、昨年度読んでよかった本第一位に持ってきてもいいくらい、好きな本なんです。

好きな人とすれ違ったとか、難病で死んじゃったとか、若い人の「泣ける」恋物語がたくさん売れていますけれど、この本は、最後の恋物語、究極の恋愛小説なんだと思います。これ以上に美しい恋の物語を、私は知らない。

物理学者の話なので、ファインマンとかアインシュタインとか、大好きな学者も出てくるのが嬉しいです。どんな天才と呼ばれた優れた人も、いつか年を取っていくのですね・・。ひとりの人間が、どれだけ強い個性を持ち、どれだけ豊かな心を、年取っても老いぼれても持ち続けるのか、愛情というものが、どんなに人を勇気付け、支え、生きることを喜びに変えるものか。幸せに生きることの価値と、それがどんなものなのかを、たった一人の人間の心を追うだけで、深く私に教えてくれた物語です。

賢くて、どんな難問にも答えられて、社会のさまざまな問題にも鋭い解答を出せるような、賢い人が、誰かを愛するなんてことはできないし、人間の感情なんてあてにならないと考えているのなら、例えばこんな物語を読んでほしいと思うのです。

2007/10/9