つづくで起こったこと

つづくで起こったこと

2021年7月24日

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『つづくで起こったこと「ミナペルホネン/皆川明 つづく」展93日間の記録』

青幻舎

皆川明の「ミナペルホネン/皆川明 つづく」展が東京都現代美術館で行われたのは、コロナの自粛が行われる直前、まだ人々がマスクをせずに街を歩いていた頃である。とはいえ、すでに街には不安がうずまき始めていた。そのぎりぎりの時期に、迷いに迷って出かけていった。そのことについては、以前も書いた。この本は、その展覧会の中で行われた様々な人との対談の記録である。対談相手は、建築家、ブランドディレクター、写真家、編集者、美術家、アートディレクター、デザイナー、編集者など多岐にわたる。

皆川明という人は、知れば知るほど奥深い。そして、穏やかで目立たないながら、内側は相当クレイジーな人である、と指摘されている。確かに。

この「つづく」展は実にユニークで楽しい展覧会であった。杜のように林立したお洋服たち、テキスタイルの数々。いくつもの絵、デッサン、そしてインテリアに建築。生活雑貨に食器まで。一つ一つに魂が込められているのが感じられた。

展覧会に行く前に、東京駅の切符売り場に並んでいたら、ミナペルホネンの「タンバリン」生地のコートを着ている女性がいた。「あっ、タンバリン!」と凝視してしまった。「それ、ミナペルホネンですよね?」と声をかけようかと思ったほどだ。かけなかったけど。かければよかったかな、と未だに悔やんでいる。

ミナペルホネンの服は驚くほど高価だけれど、おそらく十年単位で大事に大事に着られるであろうと信じられる。かと言って、一着買おうかな、とは思えないのが私である。人生の先輩が店員をやっていらっしゃるという店舗には、一度お訪ねしたい、と思うのだが、そこでなにか買う勇気が自分にあるとはあまり思えない。

2020/11/5