はなはだ、便所は宇宙である

はなはだ、便所は宇宙である

2021年7月24日

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「はなはだ、便所は宇宙である」千原ジュニア 扶桑社

千原ジュニアを「発見」したのは、もう九年も前のことだ。なんてすごい芸人がいるのだろうと思った。美しいとさえ思った。才能に震えた。なんで売れていないんだ、知られていないんだ、と不思議に思った。大阪時代の彼に関わるあらゆる情報を手に入る限りで集めた。あの頃はまだ不遇で、事故後で顔も歪んでいて、触れると切れそうな鋭さがあった。

時がたち、彼はちゃんと売れて有名になり、丸くなった。人を怖がるような気配がなくなり、はにかみながら前へ前へと出るようになった。きらめいていた才能も見慣れてしまった。もちろん、いまも才能はあふれているけれど、あの頃のように新鮮ではなくなった。それは売れて知られたからこそのことだから、彼にとってはいいことなのだけれど。

この本は彼のトイレの中に置かれたノートに書かれた言葉から発した短いエッセイが集められている。第一巻「すなわち、便所は宇宙である」は持っている。この本は第四巻だというから、おお、二巻と三巻を読み落としているではないか。私のジュニアファン力も落ちてきたものだなあ。

この本の中には、昔からのジュニアらしさがまだたっぷりと残されている。細かくて神経質で小さなことにこだわって、気になったら徹底的に追求せずにはおられない、人見知りで恥ずかしがり屋の、でも、とても鋭くて独特の切り口をもった彼らしさに満ちている。

二巻と三巻も読まなくちゃ。

2015/1/14