65 「ばんば憑き」 宮部みゆき 角川書店
実家に帰るとき、重いからどうしよう・・と思いながら、旅のお供にかばんに入れた。ゆっくり読もうと思ったのに、面白くて、気がついたら新横浜で読み終えてしまった。
六つの短編がおさめられていて、どれも、この世のものでない不思議な者たちとの物語だ。宮部みゆきは、時代物がいいなあ。暖かいまなざしが、いい。弱いもの、陽のあたらないものを大事に手のひらにすくいとるような優しい心根が感じられる。
死んでいった妻に、折檻で殺された可哀想な女の子の霊を託す「野槌の墓」が胸にしみた。
別れるけれど、消え失せはしない。亡き人びとはこの世を離れて、だからこそ永遠のものとなるのだから。
(引用は「ばんば憑き」 宮部みゆき より)
2011/7/3