アノマリー異常

アノマリー異常

63 エルヴェ・ル・テリエ 早川書房

例によって図書館に予約を入れてから相当待たされたため、なぜこの本を読もうと思ったのか、全く忘れた状態で読み始めた。フランスでゴンクール賞を受賞したそうだが、何の予備知識もなかった。

人が死ぬ話が嫌いな私なのに、最初に殺し屋が出てきて、数ページも経たないうちに何人も殺されたのでどうしようかと思った。このまま読みやめるか悩んでいると、まったく違う人物が登場したので、もう少し読んだ。すると、また次の人物が出てきて、あれよあれよとたくさんの人間があふれだした。どうするんだよ、こんなに、と思っているうちに、事態はどんどん入り乱れ、そして、思いもかけない…本当に、いきなりぎゅいん、と角を曲がるかのように、想像を絶する展開となった。

これから読む人のために、もう、これ以上何も言えないのよね。ただ、飛行機で乱気流に巻き込まれたらご注意を、としか。私って、誰。人が生きるって、何。存在とは、意思とは、私が私であるとはどういうこと?という哲学的な問いが、極めて現実的なものとして目の前に分かりやすく立ちはだかってくる。私ならどうする、家族や知人だったらどうなる、と考えを巡らせているうちに、衝撃的な終わりが。

だよねー。そうきたか。この設定だと、そこへ行くか。ってか、そんな設定、ありふれてるっちゃありふれてるのか、でも、考えもしなかったなー、などなど、思いが入り乱れる。政治も宗教も愛も憎しみも地位も家庭も何もかも。生きるすべてが巻き込まれ、問われ、そして。

世界は今、こんな状態だから。だからこそ、現実の出来事のようにすら思える物語だった。ああ、疲れた。