インドラネット

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2022年2月28日

29 桐野夏生 角川書店

うぎゃー。なんていうものを読んでしまったんだろう。

桐野夏生は「日没」以来だ。「日没」のラストにも悶絶したものだが、これはまた・・・。読み終えてぐわーっ!となってしまった。なんだろう、この徒労感。

桐野夏生はダメ男を描くのがうまい。ダメ男をいっぱい見てきたんだろうなあ。ダメ男のなかにも真実があって、それを抉り出すのもうまいのだが、やっぱり許さないのかなあ。

インドの話かと思ったらカンボジアに行ってしまった。カンボジア情勢を私は驚くほど知らないのだな、と改めて気が付いた。ポルポトくらいは知っているが、その後どうなったかわかってないんだな。木村晋介がカンボジアの弁護士育成をめざしていたことは何となく覚えているけど、あれはどうなったんだろうか。

何となく詰めが甘いところも散見される。なんだろう、リアルな感覚に欠ける部分は書き急いだんだろうか。細かい生活感が急になくなる部分とか、感情の動きが省略されているように見受けられる部分とか。

もう少し明るいものが読みたいなあ。何しろこの本をワクチン三回目接種の待合室で読んでたもんで、より一層気持ちが暗くなってしまったよ。

3/2追記

今朝、ウォーキングしながらつらつら考えていてふと気が付いたのだけれど、もしかして桐野夏生はこの小説で天皇制のこともちょっと絡めて書いていたのではないか。いや全然違うと言われそうだけれど。ラストの状況が、今の天皇制に似てる、と思ってしまった私。この話は同じ本を読んだ人としかできそうにない。