エッジエフェクト

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2021年7月24日

79「エッジエフェクト 界面作用」福岡伸一対談集 朝日新聞出版

まえがきで、福岡氏は、ヨーヨー・マと対談した経験について書いている。異なるフェーズが出会う界面では、何か激しい、素晴らしいことが起きる、ということを二人は話したという。以来、福岡氏はできるだけ自分と異なる分野の人々と会い語り合って、その言葉を聞きたいと思うようになったという。この本は、そのようにして作り出されたのだそうだ。

対談した相手の名前をずらっと読んで、「なぜ、この人たち?」と思っていたが、前書きを読んで、なるほど、と思った。できるだけ、専門分野の違う人と出会うことを、彼は求めたのだ。それにしても、小泉今日子は、ちょっと違う目的もあったんじゃないか?と下世話な私は思う。実際に、福岡さん、そわそわされてたみたいだしね。

わたしが一番面白かったのは、桐野夏生との対談だった。桐野氏は、男が三十一人、女はひとりだけという状況の「東京島」を書いた。東京島の男たちは、島に争いがたえないのは、女がいるからだと思うようになり、みんなでその女を抹殺してもいいと思うようになる。

けれど、もし、女が三十人で男が一人という「大阪島」があったとしたら、と桐野氏はいうのだ。その男がどんなにおバカさんでも殿様とか呼ばれていい目に遭う。女たちは「殿、どうされました?」とかちやほやしながら、それぞれ持ち場を作って仲良く暮らせるんじゃないか、と。でも、それじゃ事件も起きないから、小説にはならないのよね、と桐野氏は笑っていたけれど、うーむ、そうかもしれない、と私も思うのである。大阪のおばちゃん三十人と美少年。ちょっとすごいかもしれない。

2011/7/23