グッドバイ

グッドバイ

2021年7月24日

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「グッドバイ」朝井まかて 朝日新聞出版

2018年4月から2019年3月まで朝日新聞の連載小説だったらしい。知らんなあ。まあ、まとまってから読んでよかった、とは思う。

幕末の長崎の油屋商家の若き女主人が、イギリス商人と茶葉の交易で成功し、亀山社中に資金援助したり、「長崎くんち」を支えたり、最後には造船にも乗り出したりする、史実に基づく歴史物語。「土佐堀川」もそうだけど、あの時代に、男性に負けずに実業家として活躍した女性はいたものなのねえ。

歴史を読むと、政治ばかりが目につくけれど、政治はお金である。お金がなければ何もできない。政治家の影には、必ず活動資金を出す人がいてこそなのである。だけど、そこんとこがあんまり表に出ないのは、たぶん、功成り名を遂げた政治家たちが、それを公にしたがらないからじゃないか。というのはうがった見方かねえ。この物語には、グラバー邸のグラバーやら坂本龍馬やら勝海舟やら大隈重信やら、歴史の第一線の人たちが大勢登場する。その人達の金遣いの荒いことと言ったら。いずれにせよ、実は明治維新の一翼を担ったのは多くの商人たちの金であった、ということは忘れてはいけない歴史的事実である。

結構ワクワクと最後まで引っ張られる物語であった。やっぱり幕末はどの視点からも面白い時代ではあるのよねえ。
2020/2/24