ソルフェージュ

ソルフェージュ

2021年10月6日

78 よしながふみ 白泉社

よしながふみの2004年初版発行の作品。17年前か。それから彼女は「大奥」「きのう何食べた?」を描いたのだなあ。

よしながふみはBL(ボーイズラブ 男性同士の恋愛関係を描いた作品)の描き手であった。私はBLがあまり得意ではなかったので、あえて避けていたところはある。この本はたまたま書店で目があったので買った。音楽教師と教え子の恋愛、声楽家の母に捨てられた少年とヒモの恋愛。男性同士に関わらず、漫画上の性的描写がかつては非常に苦手であったのだが、何故か今は気にすることなく読める。そして、その中に深い愛を見出すに至るのだから、年取るってすごいね、と思わずにいられない。

ゲイの恋愛をフラットに描くように、知的な障害を持った少年や、ヒモとしか生きられない男性をも全くフラットに描いており、フラットに描いた、ということすら気づかせないほどの自然さにしびれる。そこには母と子の関係性の問題も登場する。人と人との関わり、認められたい、愛されたいという思いが、性愛を通して純粋に描かれていることにやっとこの年令で気がつく私である。

よしながふみはすごい。何でもなさそうに見せて、ものすごく深いものを描こうとしている。あまりに何でもなさそうなので、その深みに気づかないほどである。

それとともに気がつくのは、この作品の中でも、料理をするシーンのなんと生き生きとしているか、ということである。食べることと、愛すること。それは、きっと人生のものすごく重要なポイントなのだ、と改めて思う。