チネチッタの魂

土曜日は、半日テレビ漬け。
最初は、NHKハイビジョンでイタリア半島を海側から40日かけて回った女優さんのルポを途中から見ました。
ギリシアやアルバニアも経由して、最後はベニスまで行きました。
イタリアはどこも陽気で美しく楽しく、そして冬のベニスは水が溢れていて、長靴履いて、私もこの街を歩きたいと強く思いました。
ゴンドラにのって、橋を眺めて回りたい。

それから、イタリア映画75年の歴史を振り返る「チネチッタの魂」という番組。井筒和幸監督がイタリアの映画製作所チネチッタを訪れるのですが、井筒監督は、まあいい。それよりも、いろいろなイタリア映画の場面を挟みながら、大掛かりな映画のセットやロケ地を見て回れるのがなんとも豪華でした。

CGではなくて、セットは全て手作りです。そりゃあ、CGならいくらでも、すごい背景が作れちゃいます。でも、チネチッタは、人の知恵が、すべてを作り出す。セットは芸術品のように残されていく。古臭い考えかもしれませんが、私はそのぬくもりに感じ入ります。ベン・ハーの馬車の競争で、一周回るたびにくるくると回ったイルカを見せられて、思わず、ほほーっとため息が出ました。これを作ったのは私の父です、といま、現場でセット制作に携わっている年配の男性が、誇らしげに語ったのです。

「道」という映画が好きです。映画館で見たことはありません。若い頃、夫と二人で、テレビで見ました。小さな部屋で、みようと思ったわけでもなく、偶然テレビで始まったその映画に、二人で吸い付けられるように見入った日の事を、ありありと覚えています。無骨でわがままなザンパノ、無垢なジェルソミーナ。白黒の美しい画面、最後の途方にくれるような終わり方。あんなに胸にしみる映画はないです。

フェリーニはチネチッタで「道」を撮ったのでした。ジェルソミーナが置き去りにされた街角、綱渡りの場所、ザンパノが泣き伏す海岸。ロケ地が映し出されて、懐かしく暖かい気持ちになりました。私も、この場所に行って、この目で見たい、と思いました。

私はイタリア映画が好きなんだな、と気が付きました。
このパルティオゼットができて最初の頃に書いた「ドン・カミロ」の映画、あれもフランスとの合作ですが、イタリア映画でした。イタリアの風景、イタリアに人々は、なぜ、私をこんなに引きつけるのでしょう。ハリウッドの大掛かりなすごい映画より、ずっと私はイタリア映画が好きみたいです。

ああ、やっぱりいつの日か、イタリアに行かねば。そう思いました。

2011/1/12