ドンキにはなぜペンギンがいるのか

ドンキにはなぜペンギンがいるのか

50 谷頭和希 集英社

ドン・キホーテ(通称ドンキ)というチェーンストアを、私は最近まで知らなかった。話には聞いていたが、近所になかったし、わざわざ行くこともなかったので、そういうチェーンストアがあるらしい、としか知らなかった。ところが、一年ちょい前に引っ越した先のそばには「ドンキ」があって、そこで買い物をするのが一番お手軽だった。で、行くようになったのだが、慣れるまでは苦労した。

ほしいものがあって買い物に行くのだが、目的のものがなかなか見つからない。あふれるように商品が並べ立ててあるのに、欲しいものだけが見つからない。どこに何があるかが見渡せないので、ぐるぐると店内を歩き回り、思いもよらないような場所で目的物が発見される。すると、今度はレジがどこにあるのかよくわからなくなる。仕方なく、またあてどもなくぐるぐると歩くうちに、ようやっとレジが見つかるのである。

えらいもので、そんなドンキも通ううちに大体の商品配列がわかってきた。でありながら、いまだに時として探しあぐね、欲しいものを探し回ることがある。店員さんに聞こうと思っても、店員さんが見つからないのよー。結局、ぐるぐるとまた歩き回る。それがドンキの醍醐味なんだそうだが。

というわけで、この本を読んでみた。ドンキ商品配列は戦略なんだそうだ。「ジャングル」なんだって。迷子になって、通るはずのなかった通路を通りながら、思いもよらない商品との出会いがあり、思わず衝動買いしてしまう。それがドンキの戦略だ。圧縮陳列という、棚いっぱいに商品をぎっしり並べる方法が、実は効率よく儲けを産むための仕組みとなっているのだそうだ。うーむ。私はあまり衝動買いをしない人間なので、いろんな商品が並んでいても、「早く目的のものが見つからんかなー」としか思えない。あんまりドンキ向けの人間じゃないんだろうなあ。

ドンキは今、勢いのあるチェーンストアで、どんどん店舗を展開している。展開方法は居抜きが基本だそうで、全国各地であらゆるビルを居抜きしているそうだ。元スーパーマーケット、というのはもちろんのこと、元パチンコ屋、元病院、元銀行、果ては元秘宝館というドンキまであるそうだ。それら居抜きのビルを、一目で「ドンキだ!」とわからせるためのランドマークがペンギンである。大きなドンペンという名前のペンギンを置いたり、張り付けたり、つるしたりして、どこからでもすぐに「あれはドンキだ!」とわかるようにするために、ペンギンがいるのである。

ドンキは地方色が豊かなんだそうで、そのために各店舗には大幅な権限移譲がなされているという。そのため、店長の裁量でいろいろなカラーのドンキが作り上げられるという。確かにうちの近くのドンキには近隣農協の産直コーナーがあって、重宝しているからなあ。

というようなことが書かれた本であった。なんというか、よく練られた卒論を読まされたような感じであった。