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「バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌」
川内有緒 幻冬舎
夫が借りてきた本。
ユネスコの無形文化遺産に登録されている、バングラディシュの伝統芸能がバウルの歌。バウルとは祭りや路上で歌を疲労して生活をしているいわゆるアンタッチャブルである、という解説があれば、いや、今や憧れのスターである、そうではなく、敬虔な修行者たちである、吟遊詩人である、などなど、様々な情報がある。
元国連職員の作者は、仕事をやめたあと、何をやろうかと迷っていて、そうだ、バウルに会いに行こう、と決めた。その顛末が、この本である。
世界中から志望者が集まる超難関の国連職員に運良くなれたのに、五年半働いて辞職してしまったという作者。あら、なんてもったいない。でも、きっと理想と現実は違ったのね、これの本題とは違うけど、なんて思いながら読み始めた。でも、その感想は、最後まで読むと結構重要な要素になっていたことがわかる。
バウルはどこにいるかわからない、会えないかもしれない、歌わないバウルもいる、バウルは子どもも作ってはいけないらしい。そんな謎のバウルを追うのがこの本だ。と同時に、作者が自分自身を見つめる、考え直す物語にもなっている。そして、それこそがバウルの本質に近いものだったのだ。
本書が作者のデビュー作らしい。この作者の書くものをもっと読みたい、と思った。
2014/5/13