バカボンド37

バカボンド37

40 井上雅彦 講談社

「バカボンド」を読んだのは、なんと2011年5月のことだったらしい。もう覚えてないけど、ブログってこういう時、便利。33巻まで読んだということになってるけど、その後、どこかで続きを読んだのかなあ。とにかく、今回は37巻を夫が借りてきて「作者が、もう描けないと言ってるらしいけど、読んだらそれがわかるなあ」と言っていたので読んでみた。なるほど。ちなみに37巻が出たのは2017年のことだったらしい。もうずいぶん経ってるわねー。

ここからは、ネタバレがあるから、バカボンドをこれから読む人は読まないほうがいいかも。と言っても、もう六年前の新作だから、そんな人はあんまりいないかもだけどね。

貧しい農村に行きついた武蔵が、飢えを克服するために米を植えるのを手伝う。田を耕し、米を作る達人の老人と心を交わし合い、そして収穫まで田を見届ける。その後、小倉に仕官する手はずではあるが…。

というわけで、この本は全編、米作りなんですよ。それと並行して、村の無力な女や子どもたちに剣を教える。女たちは、一生、剣をふるって戦うことなんてないと思うけど、強くなりたい、という。米作りの中で、カエルやヘビと出会い、嵐に遭い、病を持つ米作りの達人を看病する・・・。

朝、夫と散歩に出た。川沿いには枝垂れ桜が咲き誇り、川の中州に菜の花が咲き乱れていた。鴨が飛び、ツグミがさえずり、水音が静かに響いて、春!と思う。花粉がきつくて花がぐずぐずするのは困るが、春は楽しい。冬の間、枯れ草しかなかったところに花が咲く。夏になると雑草が生い茂り、背の高さを超す。土ってすごいよなあ、水ってすごいよなあ、と思う。そんなことを言ったら、夫は「農業っていい仕事だよな。1を2にする仕事はあるけれど、農業って0から1を作る。それって無限大だよね。」と言った。そうだよなあ。何にもなかったところに作物を植えて、それが実って、食べ物になり、命になる。なんてすごい仕事なんだろう。

という会話の延長に、バカボンドの話もあったのだ。それで、読んでみて、そうだよなあ、と思った。土から命が生まれる過程を一年かけて体験してしまうと、意味もなく人を斬ってそれが誉れになる、という世界観はどうにもならなくなる。赤ん坊がはじめて歩き出す喜びを知ると、人を殺すなんてこと、できなくなるよなあ、と思う。

でも、じゃあ、なんでこの漫画を彼は描き始めたんだろう。最初は何を考えていたんだろう。それがどう変わって行ったんだろう。それとも、これから続きを描くのかなあ。だとしたら、それはどんな続きになるんだろう。それが、知りたいと思った。