パンのかけらとちいさなあくま

パンのかけらとちいさなあくま

2021年7月24日

「パンのかけらとちいさなあくま」リトアニア民話 内田莉莎子再話

貧乏なきこりのお弁当のパンのかけらを盗んだ小さな悪魔は、大きな悪魔に叱られて、きこりの役に立つまで帰ってきてはだめだと言われます。きこりの願いは、沼を麦畑に変えること。地主さんにきこりが尋ねたら、「やれるもんならやってみろ」と笑われたので、小さな悪魔が立派な麦畑にしました。でも、麦はわしのものだ、と地主は持ってっちゃいます。じゃあ、ひと束だけ、きこりにやって、と悪魔はお願いして、長い長い縄をこしらえて、全部の麦をひと束にまとめて、持って行こうとすると、地主は怒って、牡牛をけしかけます。悪魔は、牡牛を上手に操って、大きな麦の束を背に乗せて、連れてっちゃう。地主は怒って死んじゃいます。「パンを盗んだことを許してくれる?」と聞く悪魔に、きこりは涙を流して感謝し、小さな悪魔はねぐらに帰って、大きな悪魔たちにほめられましたとさ。

「・・・って、これ、あくまはぜんぜんあくまじゃないじゃん。」
「でも、地主の側から見たら、ものすごい悪魔だよね。悪魔そのもの。」
「あ、ほんとだ。」
「つまり立場が変われば、悪魔にも天使にも、なる。」
「なるほど。」

夕食後、読み聞かせたあとの兄弟の会話が、面白かったのでした。

2008/10/16