フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ

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39森達也 ミツイパブリッシング

子供向けにメディアリテラシーについて解説された本。「世界を信じる為のメソッドぼくらの時代のメディア・リテラシー」(2006理論社)を改題、加筆改筆したもの。と、最後のページに書かれていたのを読後に発見。だよねー。なんか読んだことがあると思ったもの。記録を探したけれど、前の本を読んだ記録は見つからない。でも既視感があるんだよなあ。読書記録をつけ始める前に読んだのかもね。私個人の記録としては、森達也の別の本「視点をずらす思考術」からメディアリテラシーについて2008年に書いているのが見つかった。ここにも、作者が同じだから当然のことながら、似たようなことが書いてあったようだ。

なぜこの本を読んだかというと、直接的には、ワクチンの問題がある。私自身はコロナワクチンの三回目を最近接種したところだ。基礎疾患があるからね。それについては自分なりによく考えて打ったつもりだ。でも、もし、私に今、就学年齢の子供がいて、その子にワクチンを打つかどうかと問われたらきっとすごく悩んだだろうと思う。ワクチンについては本当にいろいろな情報が乱れ飛んでいて、でも、接種したら実際にどれくらい効果があるのかとか、何年も経ったらどうなるのかは、まだ定かではない。だって、みんな初めてのことだからね。ネット上には、いくらなんでもそれはないだろう、と思うようなよくわからない情報が乱れ飛んでいる。曰く、ワクチンの動物実験で動物はすべて死んだとか、三年後には接種者はみんな死んじゃうよとか、ワクチンの中にチップが入れられているとか、磁石がくっつくよ、とか・・・。さすがにそれはないだろう、と思いはするものの、大事なわが子に何かあったら、と思うと親としては不安にもなる。何がフェイクで何が本当なのか、どうやったらわかるのだろう、みんな困るよね…と思っているところへ、この本の題名が目に入ったので読んでみた、というわけだ。

でも、当然のことながら、この本にはワクチン情報の真偽をただすにはどうしたらいいか、なんて具体的なことは書いていない。ただ、情報とは多面的なものだということ、たった一つの真実などというものはないこと、中立の立場などというものもないこと、どこから見るかで事実すら変わって見えるし、どれが間違っているとか正しいとかは言い合ってもあまり意味はないこと。世界は多面的で多層的で複雑だし、メディアは時には間違うし迷うから、いろいろな視点を集めて、自分で主体的に判断すること、無条件に信じないこと。それが大事だ、とこの本には書かれていた、というわけだ。

ワクチンについても、それから例のトランプの選挙の時の問題についても、コロナに関する様々な情報でも、本当に呆れるほど様々な情報が行きかっている。そして、みんな自分の見たい情報しか見ない、というか見えなくなっていくようなシステムができている。だからこそ、心して様々な視点からの情報を集め、何が怪しくて何が信頼できるかを総合的に判断していくことが求められる。でも、それはとても難しい、とつくづく思う。

基本的な姿勢は、やっぱり歴史をしっかりと学ぶこと、今までの失敗を見据えることだと思う。過去の間違いをなかったことにするような態度でいては、正しい情報は見つからないと思う。それくらいしか、言えないね。